エスパー
この前、ロケが一緒だった女の子のADが
デカイ黒のボストンバッグを持って来た。
思わず『それどうしたの?エスパー伊東でも入ってるの?』とひねりのないボケを添えて、尋ねると
屈託のない目で彼女は、『エスパー伊東って誰ですか?』と答えた。
その時、ハッと気づいた。
23歳の自分が知っていて、一個下の彼女が、エスパーを知らないのなら
エスパー伊東を知っている年代のボトムラインが、23歳なのだと…。
日本一身にならない知識を蓄えると、
彼女に、エスパー伊東の経歴を話し、知らなかった事を優しく諭した。
すると彼女はまたしても屈託のない目をしながら、ポケットからiPhone10を取り出し、徐ろにGoogle先生を駆使して、エスパー伊東を調べ始めた。
少しだけ、6sだった自分の肩身は狭かった。
チラッと見えたスマホの画面から『エスパー伊藤』という字が見えた。
『藤』じゃなくて『東』だよ、と
これまた優しく諭した。
『へぇ〜こんな人いるんですね!知らなかったです。』と驚いた様子だった。
そんな彼女に、エスパーの十八番『高速シリーズ』と『激辛シリーズ』を見るように
宿題を課した。
『わかりました!家帰ったら見てみます!』
爛々とした目で訴える彼女を見てると、
過酷なADの業務を終えて、エスパーを見る羽目になった事が少し申し訳なく思った。
家に帰った後、少し気になったので
久しぶりに自分でも、エスパーの動画を見てみた。
改めて見る代物ではないと強く感じた。
申し訳なさが先行した事もあり
帰りに、ハッピーターンが好きと言うので、
ハッピーターンを奢った。
『エスパーを見る羽目になった、彼女にハッピーが帰ってきますように』と、願いを込めて。
p.s 結局、黒いボストンバッグの中身は確認できず。もはやどうでもいいんだけどね。。